「正義」と「誇り」が美徳とされるファンタジー世界で、それらすべてを根底からひっくり返す、一編の官能叙事詩が誕生しました。『悪堕ち騎士の凱旋』は、単なるTSF(性転換)作品の枠を軽々と超え、主人公の内面に深く分け入り、堕ちていく過程そのものを繊細かつ濃厚に描き出す、大人のためのファンタジー漫画です。
物語の舞台は、魔王インボークに脅かされるハイネセン王国。王国随一の剣を振るう騎士団長、ジークは愛するワンダー姫と民を守るため、単身魔王に挑みます。しかし、その結末は壮絶な敗北。気が付いた時、彼の剛毅な肉体は、妖艶な曲線をたたえたサキュバスへと変貌していました。魔王の目的は、ジークの卓越した身体能力を受け継いだ「強い魔物」を量産すること。かつての敵である魔性の肉体と、そこに湧き上がる抑えがたい「淫欲」——これが新たな“戦場”となったのです。
本作の最大の魅力は、この「騎士の理性」と「サキュバスの本能」の激烈な衝突にあります。姫との純愛の記憶が朧げな中、魔王によって弄ばれ、肉体は快楽に抗えず震えながらも、魂のどこかで騎士としての誓いを握りしめるジーク。そのギリギリの葛藤と、やがて訪れる“ある転機”が、読む者の心を鷲掴みにします。「気持ち悪いのに気持ち良い」という、提供元である「あむぁいおかし製作所」が掲げるテーマが見事に具現化された、背徳感たっぷりの描写が随所に散りばめられています。
シナリオを手がける「このざま」氏は悪堕ちやTSFを題材にした作品を多数手がけており、その確かな筆致が物語に深みを与えています。また、作画を担当する「ししゃもん」氏の絵は、変貌したジークの妖美さと、もだえる苦悶の表情、ファンタジー世界観の雰囲気を見事に両立させ、視覚的にもたっぷりと楽しませてくれます。全40ページに詰め込まれたこの濃密な体験は、「悪堕ち」ジャンルの愛好家はもちろん、「強い主人公の内面崩壊」というドラマを求めるすべての読者に強くおすすめできる一本です。その結末に、あなたはきっと息を飲むことでしょう。