「艶慾ノ華 七輪目『摘心』」は、人妻・美咲の内面に渦巻く「罪悪感」と「官能」が交錯する、唄飛鳥ならではの繊細でディープな背徳劇の新章です。妊娠の可能性に気付き、恋人である菅生に戸惑いながらも喜びを伝える美咲。しかし、既婚者であるがゆえの焦りと、「このままではマズイ」という現実的な恐怖が彼女を襲います。恋人からの「夫とセックスをしてみたら」という、一見冷酷にも思える提案が、この物語にさらなる緊張感と濃厚なエロスを注ぎ込みます。
物語の核は、久々に夫を誘い、寝室で交わす「アリバイのようなセックス」にあります。かつては「痛いだけ」と感じていた夫の身体。そのゴツく大きいペニス、ねちっこい愛撫の手つき。全てが恋人との繊細で甘い時間とは正反対のものです。美咲は現実から目を背けようと恋人を思い浮かべるのですが、夫の巧みな、そして執拗な愛撫のテクニックによって、次第に身体が現実に引き戻されていきます。「苦痛だったはずのものが、気持ちよく感じてしまう」 という矛盾した感覚。まさに、唄飛鳥が描く「艶」と「慾」の華が、最も劇的に咲き乱れる瞬間です。夫の存在は単なる障害物ではなく、美咲の官能を別の次元へと覚醒させる、危険な触媒なのです。
読者は、美咲が「声が出てしまい」ながら絶頂に達し、その声に夫がさらに興奮して激しく突き続けるという、罪悪感と快楽が渾然一体となったクライマックスに、息をのむことでしょう。目的は「アリバイ作り」だったはずが、どこかで「楽しんで」しまったのではないかという後ろめたさ。それが、読後にもじんわりと残る、この作品の最大の魅力です。人妻ものの定番である「不貞」というテーマを、単なる刺激だけでなく、女性の複雑な心理と身体性のズレを通して深くえぐり出した、官能漫画の真骨頂と言えます。
長年「流麗な線描と密度の高い画面構成」で読者を唸らせてきた唄飛鳥の筆致は、美咲の儚げな表情の変化、身体のたわむれ、そして汗と熱気に満ちた性交のシーンを、まさに「艶やか」に、かつ「慾情的」に描き上げています。この「艶慾ノ華」シリーズは、常に新しい官能の扉を開いてくれる、大人のための特別な一篇です。危険で甘い背徳の渦に身を委ねてみたい方に、心からお勧めします。