家庭の片隅に置き去りにされた少女の、初めての疼きと確かな体温を求める物語。楠まじり先生と一水社編集部が贈る『美女桜』は、コミックMate L Vol.67に収録された、孤独と官能が織りなす一編です。両親の愛をたっぷりと受ける手のかかる姉とは対照的に、彼女は静かに、忘れられていた。姉と違いおとなしい妹は、家族という名の景色の中で、ひっそりと透明になろうとしていたのです。
しかし、心の隙間を埋める「人の温もり」への渇望は、彼女に危険な一歩を踏み出させます。見知らぬオジサンとの援交。この選択は、自棄でも反抗でもありません。誰かに必要とされたい、たった一人でいいから自分を見つめて欲しいという、切実で純粋な願いの形なのです。ここに、本作の第一の魅力があります。それは、単なる“初体験もの”ではなく、心理的な孤独感と身体的接触への欲求が不可分に結びついた、深みのある心理描写。読者は、少女の危うい決断にハラハラすると同時に、その心情に深く共感せずにはいられなくなるでしょう。
そして、その共感は、官能的な情景描写によって、さらに濃密なものへと変容していきます。いよいよ、彼女の「誰も触れたことがない」領域に、オジサンの太い指が近づく時。薄桃色の乳首が初めて他者に弄ばれ、覚悟を決めた少女が自ら脚を大きく広げ、晒された股間に指が伸びてゆく……。この一連の描写は、日常からの決別の儀式のようにも、新たな自分への誕生の瞬間のようにも読めます。楠まじり先生の画力は、少女の繊細な肢体の震え、戸惑いと期待が入り混じった表情、そして初めての刺激に対する純真無垢な反応を、エロティシズムの中に確かな人間味を持って描き出します。
タイトル『美女桜』は、クマツヅラ科の花「バーベナ」の別名であり、その花言葉は「魔力」や「魅力」。まさに、清楚で可憐ながらも人を惹きつけてやまない少女の魅力を象徴するかのようです。この作品は、家庭という閉塞空間から飛び出した少女が、危険な関係性の中で自らの「美」と「性」を初めて自覚してゆく過程を、官能的でありながらどこか哀切を帯びた筆致で綴ります。FANZAで独占配信されるこの珠玉の一篇は、従来のジャンルの枠を超え、読む者の胸にじんわりとした切なさと熱を同時に残す、出色のエロティック・ドラマです。