認知的不協和とは、自分の行動や信念が、それと矛盾する事実に直面したときにストレスが生じることです。
例えば、自分が今までの人生で強く信じていたことや、大好きだったことが「間違っている」と言われたら、誰だって受け入れがたく感じますよね。
そして、その受け入れがたい気持ちをどうにかしようと思い、「そんなことはない」とあらがってみたり、自己嫌悪に陥りながらもその行動を継続したりといったような行動をとってしまいます。
このように、行動や信念が否定されたときに感じる心のモヤモヤのことを、心理学では「認知的不協和が生じている状態」と表現するのです。
この記事では、認知的不協和の心理メカニズムについてわかりやすく説明するととみに、それを解消する具体的な方法について解説します。
認知的不協和をうまく恋愛やマーケティングに役立てるテクニックについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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認知的不協和の意味とは?
正しく言うと自分の行動・信念・欲求などがそれと相反する事実によって否定されるときに生じる葛藤のことですが、簡単に言うと以下の図式のようになります。
認知的不協和の図式
「自分 ⇔ 否定的な事実」→ストレス
例えばよく煙草が例に出されますが、煙草の例で図式を埋めると下図のようになります。
認知的不協和の図式(煙草の場合)「煙草が好き・吸いたい ⇔ 煙草を吸うと寿命が縮まる(否定的事実)」→ストレス
こうして見ると認知的不協和は意外にも身近にたくさんあるような気がしてきませんか?
自分に不都合なことが起こってもやっとしたら、それはもう認知的不協和といえます。
身の回りのストレスのほとんどはこの認知的不協和で説明できてしまいます。
名前は難しそうですが、そんなに難しく考える必要はありませんよ。
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認知的不協和の解消方法:心理学で解説!
実はストレスそのものよりも、そのストレスを消そうとする心の動きの方が大事です。
認知的不協和の図式
「自分 ⇔ 否定的な事実」→ストレス
という図式を理解した上で、ではこの出てきてしまったストレスをどう処理しよう、となったとき人間はどういう風にこのストレスに対処すると思いますか?
この場合、大体は新たな認識を持つことで解消しようとされます。
さっきの煙草の例で説明しましょう。
認知的不協和の図式
「煙草が好きな自分 ⇔ 煙草は体に悪いという事実」→ストレス
この図式だと、煙草が体に悪いという事実を自分がどうこうすることはできませんよね。
ここで人は「煙草を吸っていても長生きな人は居る」「煙草を我慢するストレスの方が体に良くない」という風に別な事実を付け加えてストレスを誤魔化す方法をとることがあります。
こうした認知的不協和の解消、ストレスをなくそうとする心の動きはごくごく自然のうちに勝手に表れてしまうという点が重要です。
またその強さの仕組みや、その心の動きが行動に与える意外な影響それが重要視されることが多いのですが、続いてはその仕組みについて見ていってみましょう。
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認知的不協和の解消例①:酸っぱい葡萄の例
イソップ童話の話のひとつですが、ある狐が木の上になった美味しそうな葡萄の実を見つけます。
しかし狐がどう頑張ってもその葡萄には手が届かず、葡萄を食べることができません。
このとき、狐には認知的不協和が発生していて、その図式はこうなります。
葡萄が食べたい(自分の欲求)⇔葡萄を食べることが不可能(否定の事実) →ストレス
そしてその結果、葡萄を食べることを諦めなくてはならなくなった狐はこう考えます。
「あの葡萄は酸っぱいに違いない、だから食べられなくても悲しむ必要はない」
つまり葡萄が食べたいという自分の欲求自体を、あの葡萄は酸っぱいから本当は食べたくはなかった、という風に否定してしまったのです。
認知的不協和を自分の方を変えることで解消しようとした一例ですね。
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認知的不協和の解消例②:甘いレモンの例
続いて甘いレモンの例です。
お腹が空いて何か食べなくてはならないというときに、手元にはレモンしかありません。
でもレモンをそのまま丸かじりするには抵抗がありますよね。
抵抗、すなわちそのストレスは認知的不協和の図式で説明できます。
レモンは酸っぱいから食べたくない(自分の欲求)⇔何か食べなくてはいけない(否定の事実) →ストレス(食べたくない)
このとき、人は無意識に「このレモンは甘いに違いない!」と思うことで、ストレスを低減しようとします。
また食べ終わった後でも、「さっき食べたレモンはとてつもなく酸っぱかったが、思い返したら少し甘かった気がする」といった風に、自分に不足していた成分を勝手に補足してストレスを少なくしようとします。
この「補足」もまた、認知的不協和の特徴のひとつですね。
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認知的不協和の大きな二つの特徴
実践的な認知的不協和に移る前に、認知的不協和の特徴を2つ抑えておきましょう。
認知的不協和を理解する上での2つのポイント
- ①認知的不協和が生まれると、それを解消しようとする心の動きも生まれること
- ②その心の動きの大きさは、認知的不協和の大きさに比例すること
狐が葡萄を酸っぱいと決めつけて諦めたように、ときにシュールな方法や思い込みを使ってでも、人はストレスをなくそうとします。
このように認知的不協和が生まれると、そのストレスをなくそうとする心の動きも必ずセットで生まれます。
しかもその大体はとっさに、無意識に出てしまいます。
またストレスが大きければ大きいほど、この心の動きの力も大きくなります。
この2つが認知的不協和を活用する際に重要になるのです。
認知的不協和のストレスが煙草や葡萄よりも遥かに大きかった「カルト教団の例」を見て、その力の大きさと恐ろしさを知ってみましょう。
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認知的不協和の恐ろしさ:カルト教団の例
認知的不協和を初めに提唱したアメリカの心理学者フェスティンガーは、あるカルト教団に潜入しました。
そのカルト教団が認知的不協和を説明するのにとても良い状況にありそうだと目を付けたからです。
そのカルト教団は「もうすぐ世界の滅亡が訪れ我々は滅び去ってしまう」と言います。
そして教団の人はそのカルト教団の神を信じていたため、もちろんその予言を信じました。
しかし予言の日が訪れても、私達が今も生きているように、世界の滅亡は起こりません。
このとき、カルト教団の団員にはとても大きな認知的不協和が生まれます。
滅亡の予言をしたカルトの神を信じる自分⇔実際には世界は滅びなかったという事実 →ストレス
信じていたのに、神は間違っていた?本当は神など居なかった?
この膨大なストレスを、カルト教団の団員はどのようにして解消したと思いますか?
ぱっと思いつくのは「信仰を辞め、教団を去る」だと思います。
ですがそうした人達はほんのわずかで、実際はさらに熱心にカルトにのめり込む人がほとんどでした。
「なんで?どうして?」と思いませんか?
これが認知的不協和の恐ろしさなのです。
カルト教団で認知的不協和が強化された理由
- すでにカルトに人生やお金や時間を大量につぎ込んでいたため、引くに引けなかった
- 周りもそうしている人が多かったので反発できなかった
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といった様々な理由で「教団を去るよりも残る方がストレスが少ないと感じた」人が多かったのでカルト教団を辞められなかったこと。
それに加えて先程の「甘いレモン」の例の補足効果も相まって、「神は予言を外したのではなく、神が滅亡から我々をお救いくださった」と言う風に補足が入り、信者がますますカルトにのめり込む結果になってしまったのです。
認知的不協和が大きくなる条件
- その信念がとても強く、いつもその信念に基づいて行動してきた
- その信念に基づいて取返しのつかない行動をすでにいくつもしてきた
- しかし、その信念を否定する事実があまりにも強大で誤魔化せない状態
- その個人的にはどうしようもないほど明らかではっきりとした間違いでも、集団の中に居るとお互いを誤魔化し合ってしまう
このようなとき認知的不協和はとても大きくなります。
また認知的不協和をなくそうとする心の動きもとても大きくなります。
どうしようもないストレスに直面した結果、カルト信者たちは更にカルトにのめり込んでしまうという大きな過ちを犯してしまいました。
このように、ときに認知的不協和は人を更なる泥沼に陥れてしまう危険があるのです。
しかもこれはカルトの教団によってあらかじめ仕組まれていたことでした。
教団が信者の信仰と結束を強めるために、認知的不協和を利用したのです。
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マーケティングや恋愛に認知的不協和を利用する
上のカルト教団の例を見ていただいた方なら、認知的不協和が人を動かす力があることがわかっていただけたと思います。
カルトの例では、教祖は敢えて外れると分かっている滅亡の予言をすることで、信者の信仰と結束をより深めることに成功しました。
認知的不協和を与え、その解決策を自分で提示することで、他人の行動をコントロールしたのです。
例ではカルトでしたが、これをマーケティングや恋愛に利用しようという試みもあります。
認知的不協和でサービスや商品を買わせる
認知的不協和を気付かないうちに処理してしまうことは意外にも多いです。
特に毎日繰り返すような生活の一部になると、不満を不満とも思わなくなってきますよね。
毎日不満をため込むと脳に良くないので、脳が色々な機能を使って無意識にシャットダウンしているのです。
しかしこれをあえて思い出させる宣伝をうちます。
すると人は自分の不満に気付き、それを解消しなくてはという心の動きが生まれます。
このとき、目の前にその不満を丁度良く解消してくれる製品が売っていたら「買おうかな」と考えますよね。
商品やサービスを売り込むときに認知的不協和を活用する方法
- できるだけ強い認知的不協和を与える
- それを解決できる商品を見せる
このように認知的不協和を上手くサービスや商品のPRに利用することができるのです。
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認知的不協和で恋愛も上手くいく?
上で見た「暴力を振るう夫と別れることができない」という状態は、「カルトを抜けられない」と似ていると感じませんか?
もう何年も連れ添ってきた・お金も人生もたくさん費やした。
しかし、幸せな思い出もたくさんある。
気も合う仲で一緒にいるととても楽しいし、これからもうこんな人と巡り合うことはできないと感じる。
でもそれは認知的不協和です。
「カルトなんて抜けた方がいいに決まってるじゃん、バカだなあ」と思っていたのに、こうして言われると「確かに、大好きな人と別れるのって辛いよなあ…」と思ってしまいませんか?
確かに人生でそう何度もあることではないほどの大きな葛藤です。
でも認知的不協和から見れば、それはカルトから抜けられない人と原因は同じなのです。
泥沼の窮地に居るとき、正しい判断をするには自分を客観的にみることも良い方法のひとつ。
そんなときにあなたが自分を遠くから見つめ直すための視点のひとつとして、認知的不協和が役に立つでしょう。
「ああ、これはカルトから抜けられない人と同じだ。私ってバカだ」と思えるようになったとき、暴力夫から逃げるという決断ができるようになることもあるのです。
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自分のストレスを上手に解消する方法として
人間にとって、認知的不協和は甘い誘惑です。
例えば煙草を吸うと体に悪いというストレスを誤魔化したい。
このとき心の動きは「煙草を吸っていても長生きできるさ」と考えようとします。
でもこれってなんの解決にもなっていませんよね。
認知的不協和に負けると、問題を解決できないままになってしまいます。
時には戦うべきストレスもあるということですね。
向き合うべきストレスか逃げてもいいストレスか。
判断するのに認知的不協和という考え方が役に立つかもしれません。
また付き合ってお互いを知れば知るほど、自分に都合の悪い事実もたくさんわかります。
そしてその度に認知的不協和は生まれます。
それを二人で乗り越えなくてはなりません。
「相手の立場で考えてみる」とは良く言いますが、相手や自分が何に苦しんでいるのか、何を辛いと思うのか、わかっていれば対処が簡単になりますよね。
ですがそういう風に視野を広げて相手の立場になって一緒に考えてあげるためには、経験と知識が必要です。
客観的に自分を見て、自分を律し、相手の立場になって考える。
そういう助けに認知的不協和の知識を使ってみてください。
乗り越えた壁の分だけ絆が深まるのもまた事実です。
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マーケティングに使える?
あえて認知的不協和を相手に与えて、それを解消することで自分の評価を上げるということ。
あえて会わない時間を長くしたり、メッセージの返事を遅くしたり。
自作自演とも言えます。
ものすごく恋愛工学に長けていて、人の気持ちを動かすのが上手な人ならそういうこともできるかもしれません。
ですがこういう作戦は大体は失敗します…おススメはしません。
「相手を試してはいけない」というのは恋愛の大鉄則です。
そんな小細工をする人より、我慢強くて、心の弱さに負けず、自分の困難を一緒に手をとって一生懸命解決しようとしてくれる人の方がずっと良いと思いませんか?
わざと相手に嫌な思いをさせるよりも、より自分が誠実で居られるように頑張ること。
そういう方面に認知的不飽和の知識を使う方が地道ですが効果的で無難です。
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まとめ
今回はストレスを感じるときの心の動き、認知的不協和についてお伝えしました。
まとめると、認知的不協和とは「私達がときに迷い、ときに大きな間違いを犯してしまうときの心の仕組みを解明したもの」ということができるでしょう。
認知的不協和についてのまとめ
- ストレスとストレスを解消しようとする心の動きはセットになっている
- ストレスが大きいほど、心の動きも大きくなる
- しっかり認知しておけば、カルトにのめり込むような大きな間違いを避けられる可能性が上がる
本文でも見たように、認知的不協和は、上手に活用すればマーケティングや恋愛で成果をあげるためのテクニックとしても使うことができますから、ぜひ参考にしてみてください。
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