肖像画といえば歴史上の人物や、有名人の姿を描いた絵ですが、肖像画の中には「これってもう写真でいいんじゃないの?」と思えるものもありますよね。
昔の人はなんでわざわざ肖像画を描かせたんだろう?と疑問に感じている方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれません。
この記事では、肖像画の意味や歴史(写真との役割の違い)から、肖像画を実際に依頼する方法などについて解説します。
肖像画に関心のある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
[ad#co-1]
肖像画が描かれた意味
冒頭でも見たように、肖像画の中には写真と見間違えるぐらいに精密に描きこまれたものもありますから、「写真と肖像画はどのように使い分けるものなのか」を理解しておくことは大切です。
もちろん、写真というものが発明される以前は肖像画にたよるしかなかったということはありますが、写真技術が登場した近代以降においても肖像画は数多く描かれてきました。
しかし、肖像画は、写真ではできない「イメージを描きこむこと」によって、いろんな目的に使うことができるというメリットがあるのです。
写真と比べた場合の肖像画のメリット
例えば、ときの権力者が「自分の国民には、自分をこういう人間だとイメージしてほしい」という姿で肖像画を描かせるということはよくありました。
また、イエスキリストや聖母マリアの肖像画は、キリスト教会が布教をやりやすいようにするための道具とて用いてきたという歴史もあります。
肖像画の歴史をみると、その肖像画が描かれた時代の背景や権力者の意図が見え隠れしているのがわかってとても面白いですよ。
[ad#co-1]
肖像画は歴史の証人
肖像画を鑑賞するときには、「この肖像画は誰のために、何のために描かれたか?」にぜひ注目してみてください。
このような視点で肖像画を見ると、その時代の歴史背景・意味が見えてくるのです。
例えば、ルネサンス以降、イタリアを中心としたヨーロッパではいろんなジャンルの肖像画が描かれましたが、それらの肖像画は、依頼主やジャンルによって「ランク」が決まっていました。
最上位が宗教画で、次にランクされるのが権力者を題材にしたもの、その下に風俗画、風景画、動物画、静物画…とつづきます。
当然、画家もこのジャンル別にランク付けされていました(宗教画を専門で描く画家は最高ランク、王侯貴族の肖像画を描く画家はその次のランク…といった具合です)
なぜ教会が肖像画を描かせたか?というと、次のような理由があるからなんです。
[ad#co-1]
なぜ、教会はキリストや聖母マリアを描かせたのか
例えば、キリスト教というものを全く知らない人に対して、キリスト教の物語や教えを説明しようと考えたときには、イメージしやすい肖像画や像があったほうが説明しやすいですよね。
このとき、相手にはキリスト教がもつ受難のイメージや、神々しいイメージが伝われば伝わるほど良いですから、単に写実的な人物画だけではなく、イメージを強調した肖像画の方がのぞましいこともあります。
こういったときには画家が依頼主の要望に合わせて自由に描くことができる肖像画がとても適しているというわけです。
イエスキリストは本当はアラブ系の顔をしていたかもしれませんが、西ヨーロッパ圏で布教するときには白人のような顔つきをした肖像画の方が適しているといった具合ですね。
このように、肖像画というのは必ずしも「実物とそっくりに描けばよい」というものではなかったのです。
写真と肖像画の役割の違いを理解していただけたのではないでしょうか。
[ad#co-1]
宗教画は最高ランクだった
「宗教画が最高ランク」と聞くと、現代の私たちはちょっと意外な気がするかもしれませんね。
宗教的なもの(キリストを描いたもの、聖母マリア像、神話にでてくる神の姿など)が上位にランクされるのは、その肖像画を依頼しているのが教会だからなんです。
昔の人たちは今の人たちよりも神様を深く信じていましたから、ときの権力者などから寄付を受けたりして、キリスト教の教会は非常に強い力を持っていたのです。
もちろんキリストや聖母マリアは画家の目の前にはいませんから、依頼された画家は想像で描かねばなりません。
もし、できばえが意にそぐわなかったなら、画家としての生命は終わりになってしまうかも知れませんから、かなりの恐怖とプレッシャーだったでしょうね。
[ad#co-1]
肖像画に見え隠れする貴族の見栄
中世ヨーロッパやルネサンス期の肖像画には、貴婦人を描いた絵がとても多いのに気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。
肖像画に貴婦人をモデルにしたものが好まれた背景としては、当時のキリスト教会と同等の権力やお金を持っていた貴族たちの存在があります(メディチ家やハプスブルク家などが有名ですね)
宗教的人間観を利用した貴族
西洋には、旧約聖書にあるように、人は神の姿をかたどって創られた、だから自然や動物の支配者であるという人間観があるんです。
神にちかい人の肖像は美しく崇高でなければなりません。
だから貴婦人の肖像画が多いんです。
無骨な男性では美しさが台無しです。
私はこんな美しい妻や愛人をもつことができるんだと言いたげな、貴族の見栄や権力が見え隠れしているというわけですね。
つまり、人間社会を支配する貴族(名家)王族は、神に準ずる美しく崇高な貴婦人をも所有する、選ばれし存在なのだと肖像画をとおしてアピールしたかったんです。
[ad#co-1]
ナポレオンの肖像画は「ウソ」
白い馬にまたがり、勇敢にアルプスをこえる有名なナポレオンの肖像画はとても有名ですから、だれもが一度は見たことがあるでしょう。
この肖像画が果たした歴史的役割は非常に大きく、人々はナポレオンの勇ましさに「英雄」というイメージ像をうえつけられたのです。
しかし、実はこの肖像画は「ウソの設定だらけ」だということをご存知でしょうか。
ナポレオンは肖像画のモデルを拒否した
肖像画を描くには、当然その肖像画に描く人にモデルになってもらうのが常識です。
ナポレオンの公式画家ダヴィットが、スペイン王からナポレオンの肖像画を依頼されたのですが、ナポレオンはそのモデルを拒否し、代わりに衣装や帽子だけをダヴィットに貸し与えました。
「本当の私の姿なんかどうでもいいから、良いイメージになるように肖像画を描いてくれ」というわけです。
当時のナポレオンはフランスで絶対的な権力を握っていましたから、このように指示されたダヴィットとしては「断りたくても、断れない仕事」だったのです。
白い馬もフェイク
当時、アルプスをこえるには馬では不可能で、ロバが使われていたのは歴史的な事実です。
でも足の短いロバでは、かっこ悪くて英雄のイメージがこわれてしまいますよね。
そこで勇壮に見せるために、ナポレオンの肖像画は白い馬にまたがった姿になったのです。
この肖像画が、史実とは違うものになったのは言うまでもありませんが、実際に現在の私たちが「ナポレオン」の名前を聞いて思い浮かべるのはあの勇壮な肖像画ですよね。
ナポレオンの勇ましい「英雄」というイメージ作りは成功したのです。
[ad#co-1]
日本の肖像画と西洋の肖像画
日本は神道・仏教文化、西洋はキリスト教文化と言われています。
このような文化の違いを反映して、肖像画の描かれ方にも日本と西洋とでは大きな違いがあります。
日本の肖像画がh、古くは神話にでてくる神々や、聖徳太子像、仏教が伝来してからは釈迦や菩薩などの実在ではない肖像画が多かったんです。
戦国時代になると、武田信玄、上杉謙信、織田信長、豊臣秀吉などの戦国武将の写実的な肖像画が台頭してきます。
その後、江戸時代になるとまた、歌舞伎役者の絵に代表される「イメージが先行している肖像画」が全盛を極めるようになります。
[ad#co-1]
日本は女性主権、西洋は男性主権?
権力をアピールするために描かれたと思われる肖像画では、西洋では貴婦人の肖像画が、日本で男性の肖像画が多いのに気づかれると思います。
裏をかえせば、こんなにも強い武将を奮い立たせているのは女性たちなのだと肖像画が語っているとも考えられます。
太古のむかしから戦国時代ごろまでは、卑弥呼に代表されるように日本は女権の国で、表に出るのは男性であっても、影で支えている強い存在は女性というイメージが根強いのです。
大きく表現法に違いが出るのは江戸時代から
このような風潮に変化が生じるのは、江戸時代の浮世絵が登場ときからです。
戦国武将の肖像画まではわりと写実的な表現だったのがガラリと変わり、歌舞伎の役者絵や相撲絵などでは、モデル本人とはまるで違った姿が描かれるようになります。
異様に大きく表現された顔や表情はデフォルメされた肖像画で、初めて見る人には衝撃的でしょう。
この浮世絵の表現方法は西洋絵画にも影響を与え、現在のマンガ・アニメ文化にも引き継がれているといえるでしょう。
ここでも、単に写実的に描くことが目的ではない肖像画の役割(一般大衆に対してイメージを伝えること)が最大限に活用されているといえます。
[ad#co-1]
肖像画の現代における役割
このように、肖像画には人物の姿を記録することとともに、一般大衆に対して象徴としてのイメージを伝える役割もあります。
(むしろ肖像画の依頼主にとっては、こちらの方が重要かもしれません)
記録や写実性では絵は写真にかないませんが、イメージを伝える力では、画家が自分の想像力をそのままぶつけることができる肖像画に軍配が上がるでしょう。
さらにいえば、現代ではスマホやデジカメで写真は「誰でも簡単に手に入れられるもの」になっています。
単純に考えて、恋人から「あなたの写真を撮ったのであげるよ」といわれるのと、「あなたの肖像画を描いてみたよ」といわれるのとでは、どちらが特別な感じがするでしょうか(もちろん後者ですよね)
このように、「イメージを伝える手段」としての肖像画は、写真が簡単に手に入るようになった現代では、むしろ重要度が高まっているともいえるのです。
[ad#co-1]
「美しい人はより美しく、そうでない人はそれなりに」
フイルムのCMにあったように、とびきり美しい容姿でない人をモデルとした写真は「それなり」に写ってしまうのもの短所といえるかもしれません。
多少の修正はできても、記録性や写実性がすぐれているだけにゴマカシがきかないというわけですね。
それにくらべ肖像画は、一瞬の表情やしぐさの美しさを切り取り、その魅力を最大限にひきだして描くことができます。
この力があるかぎり、肖像画はこれからも必要とされるでしょう。
[ad#co-1]
肖像画をプロに依頼する方法
ここまで読まれて、自分の肖像画を残してみたい!と思われる方もいると思います。
ただ、「肖像画って誰に頼めばいいの?プロに頼むとお金はどのくらいかかるの?長時間モデルになってじっとしているのはイヤだし、写真からでも描いてもらえるの?」…などなど色々と心配に感じることもありますよね。
以下では、肖像画をプロの画家に描いてもらうときの注意点や、自分のイメージ通りの完成品にしあげてもらうためのポイントについて解説しましょう。
肖像画を依頼する前に注意しておくこと
肖像画を描いてくれる画家やスタジオは実は現代でも全国にたくさんあります。
↓以下のようなお店であればネット経由でもすぐに探せますし、写真を郵送やデータで渡しさえすれば簡単に特徴をとらえて描いてもらえます。
>>プロの似顔絵作家が世界に一つだけの似顔絵を作成します!!
ですが、ただ単に写実的にあなたの姿を忠実に描いてくれればいいなら、写真を使う方が安上がりですよね。
できあがってきた肖像画があなたのイメージ通りでなければなんにも意味がありません。
肖像画を依頼する前には、次のような点に注意しておきましょう。
肖像画を依頼する前にチェックしておくべきポイント
- ①何のために描いてもらうのか目的をハッキリさせる
- ②依頼する画家の過去の作品を調べる
- ③いちばん気になる予算と料金
以下、順番に説明しますので、参考にしてみてくださいね。
[ad#co-1]
①何のために描いてもらうのか目的をハッキリさせる
まず、肖像画を依頼するあなたの目的をハッキリさせておくことが大切です。
部屋に飾っておくため、両親や家族に贈るため、若い頃の自分を記録として残しておきたいから、記念の日の記録…など。
目的により絵の大きさや、油彩・水彩・パステル画・えんぴつ画など、画家と相談する内容がわかりやすくなります。
また依頼先の選定がしやすくなりますよ。
②依頼する画家の過去の作品を調べる
どんな画家にも得手、不得手があります。
あなたの目的に合う絵を描いてもらえるかどうかを見極めるには、その画家の過去の作品を調べるのが一番手っ取り早いでしょう。
↓これもネット等で公開しているケースが多いので、あなたのイメージにぴったりな画家を選ぶようにしてみてください。
③いちばん気になる予算と料金
肖像画や似顔絵を依頼するときにいちばん気になるのが料金ですが、依頼ページには必ず表示されていますので確認しておきましょう。
※↓例えばこんな風に、描く人数やサイズによって料金は決まっています。
もちろんキャンバスの大きさや画材(油彩・水彩・パステル等)・データでもらうなどによって違いますが、数千円~数十万円まで開きがありますから、注意しましょう。
できるだけ安くしたいと思うのは当然ですよね。
しかし、安い値段で依頼した場合にはやはり「それなりのもの」が仕上がってきてしまう可能性が高いです。
肖像画や似顔絵を依頼するときには、あなたの目的と画家の作風を事前に知っておき、予算と見比べておくことが大切になります。
「安物買いの銭失い」なんてことにならないように注意してくださいね。
[ad#co-1]
まとめ
今回は、肖像画の意味や歴史、写真との役割の違いなどを紹介しました。
歴史の裏側の意味や意図を知ることにより、肖像画を鑑賞する楽しみが増えたのではないでしょうか。
また、肖像画を描いてもらいたい人へのアドバイスが参考になれば幸いです。
[ad#co-1]