「情けは人の為ならず」とは、「他人に情けをかけておくことは、めぐりめぐって自分自身のためになる」という意味の言葉です。
誤解されやすい点ですが、「他人に情けを書けるのはその人のためにならないからやめておきましょう」という意味ではありません。
平成22年度の「国語に関する世論調査」によると、回答者の半数ほどの方が意味を誤解していたそうですので、注意してくださいね。
この記事では、この言葉のくわしい意味や語源、使い方について例文を用いて解説します。
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「情けは人の為ならず」本当の意味は?
冒頭でも説明しましたが、「情けは人の為ならず」の本当の意味は、
「人に情けをかけておけば、巡り巡っていつか自分にもよい成果が返ってくる。だから人には親切にせよ」ということです。
ここでいう「情け」とは、他人に対する思いやりや親切心のことですね。
「為ならず」とは「そのためではない」という打消しの意味があります。
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「情けは人の為ならず」の間違えやすい誤解
以下はいずれもよくある間違いですので注意してください。
- 人に親切にすることは、その人を甘やかすことになるから、その人のためにならない
- 人に親切にすることは、人の為にも自分の為にもならない
「情けは人の為ならず」は「人に親切にするな」という教えではなく、「自分自身のために、他人に親切にしましょう」という教えなのです。
自分のために他人に親切になりなさい、といわれると、なんだかやってみようかなという気持ちになりますよね。
誤解の原因
「人の為ならず」なのに「人の為にならず」と誤解してしまったものと考えられます。
この誤用は実は比較的新しく、昭和30年代頃から現れたと言われています。
現代社会の人間関係の希薄化、個人主義の台頭などの風潮も背景にあると言えるでしょう。
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「情けは人の為ならず」の意味を例文で確認しよう!
情けは人の為ならずという言葉は、次のような例文で使います。
- 「情けは人の為ならず」の精神で、ボランティア活動を続けている
- 迷子を警察に連れて行った。そのため会議に遅れたが「情けは人の為ならず」だ
↓なお、こちらはよくある間違った使い方ですので注意してください。
- 「情けは人の為ならず」だから、おばあさんに席を譲らなかった
「親切はおばあさんのためにならない」という意味になってしまっていますので、間違いということになります。
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「情けは人の為ならず」の語源
「情けは人の為ならず」という言葉の語源(由来)については諸説があるのですが、その中でも有力なのが平安時代の「源氏物語」に出てくるお話です。
「源氏物語」葵上の巻には、次のような表現があります。
源氏物語に出てくる「情けは人の為ならず」の表現
世の中の情は人の為ならず、我人の為につらければ、必ず身に報ふなり
意味としては、「世の中の親切というのは人の為ではない。人につらく当たると必ず自分もつらくされるものだ」ということになります。
現在使われている言葉と同じ意味ですね。
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その他の由来
上で見た源氏物語に基づく言葉だという説のほかに、次のような文献でも「情けは人の為ならず」という言葉が見られます。
以下、参考までに紹介します。
『情は人の為ならず、身に廻る』
これは、「世話尽第二巻」という江戸時代のことわざ・俗語辞典に出てくる言葉です。
意味は「親切というものは人の為ではない。我が身にめぐってくる」ということになります。
その他にも「曽我物語」「山中常磐」「御前義経記」など多くの書物で同じ用例が見られますが、これらは江戸時代に入って以降の書物です。
そのため、もっとも古い出典としては、上で紹介した源氏物語(平安時代)のものになります。
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「情けは人の為ならず」の類語は?
「情けは人の為ならず」と同じ意味の言葉(類語)としては、次のようなものがあります。
- ①因果応報
- ②人を思うは身を思う
それぞれの言葉の意味について確認しておきましょう。
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①因果応報(いんがおうほう)とは
人が良いことをすれば必ず良い報いを受け、悪いことをすれば悪い報いを受ける、という意味です。
これは仏教の基本的な教えの一つで、この世で善い行いをした人は、次に生まれ変わるときにはより良い環境に生まれることができるという意味があります。
②「人を思うは身を思う」とは
こちらは読んで字のごとくですが、「他人を思いやることは、自分を思いやることでもある」という意味になります。
他人への思いやりは巡り巡っていずれ自分に返ってくるという事で、「情けは人の為ならず」と同じ意味ですね。
「情けは人の為ならず」の対義語は?
「情けは人の為ならず」の対義語(反対の意味の言葉)としては、「情けも過ぐれば仇となる」という言葉があります。
これは「相手のためにいいと思ってしたことでも、限度を超えてしまうとかえって悪い結果になる」という意味です。
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まとめ
今回は、「情けは人の為ならず」という言葉の本当の意味をご紹介しました。
ほとんどの辞書では誤用が注意書きとして添えられていますので、非常に間違えやすい慣用句といえますね。
類語や語源などを一緒に覚えると、正しい意味がしっかり頭に入ると思いますので、参考にしてみてくださいね。
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