功利主義とは、ごく簡単にいうと「1人でも多くの人が幸せな社会が良い社会」とする考え方のことを言います。
一見、とても良い社会のように聞こえますが、問題点として「たくさんの人の幸せを守るためには、少数派の人たちの幸せはある程度制限してもかまわない」という考え方になりがちであることも批判されます。
この記事では、功利主義の考え方の具体例や、問題点についてくわしく紹介しますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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功利主義とは?簡単にわかりやすく解説!
功利主義では、何かむずかしい決断をせまられたときに、「1人でもたくさんの人の幸せが増える方法を選ぶ」というように考えます。
自分がする行為によって、人間の満足度がどのぐらい増えるだろうか?ということを基準に、正しいことと間違っていることを決めるというわけですね。
こうした考え方のことを「最大多数の最大幸福」と呼ぶことがあります。
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功利主義の考え方を体系化したのはベンサム
この功利主義の考え方を体系化した(しっかりとまとめた)のは、イギリスの哲学者ジェレミー・ベンサムです。
ベンサムは、人間がどのように行動するかは、人間の満足度によって判断されると考え、一人ひとりの人間の満足度が最も高くなるのが理想的だという風に考えました。
功利主義の特徴(他の考え方との違い)
功利主義の特徴として、結果主義であることが挙げられます。
結果主義とは、人間の満足度が高まったかどうかは、その人が結果としてどのように感じたかで決まるということです。
例えば、人がアイスを食べたときに結果としてその人が満足していれば、満足度が高まったと考えます。
これが結果主義です。
そのため、功利主義においては、満足度の高いかどうかは、その人が結果としてどう感じるかによって変わることが前提となっています。
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功利主義の具体例①:5人を殺すために一人を殺すことは倫理的であるか?
功利主義においては多くの人が幸せになる社会が良い社会であると言えます。
多くの人が幸せになるためならば、少しの人が犠牲になることは仕方がないと考えます。
例えば、功利主義にもとづいて考えると、5人の命が助かるのであれば1人を見捨てることは正しいと考えます。
功利主義の具体例②:臓器移植はなぜ許されるのか?
5人の患者がそれぞれの臓器の病気のために死にそうになっており、脳死になった人がいるとします。
功利主義の考え方にもとづくと、5人の患者を助けるためには一人の脳死患者を殺して臓器移植することが、社会全体の満足度を高めることができると考えます。
その理由は、一人を殺しても、5人が助かるからです。
1人が犠牲となってたとしても、5人の幸福度は高まることから、結果として脳死患者を殺すことは正しいと考えます。
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功利主義の問題点
功利主義には様々な問題点がありますが、一番大きな問題点は、多くの人が幸せになるためには、少数の人が不幸せになってもかまわないと考えてしまうことです。
以下では、まず功利主義のモデルケースと考えられているトロッコ問題について考えた後で、功利主義に対する代表的な批判について説明します。
トロッコ問題
トロッコ問題が示す功利主義の問題点は、「たくさんの人が幸せになるなら、少数の人は不幸せになっても問題ない」という考え方になりがちな点です。
例えば、トロッコが暴走しておりその先には5人の人がいるとしましょう。
放っておけばその5人は確実に死んでしまいます。
しかし、線路の分岐スイッチを押せばトロッコを別の路線へ向かわせることができます。
ただし、その線路上には1人の人がいて線路の分岐スイッチを押せば今度はその人が死んでしまいます。
この時、功利主義では、多くの人が幸せになるためなら、少しの人が死んでも構わないという考え方であるため、線路の分岐スイッチを押して、トロッコを別の方向に向かわせて一人の人を殺すべきであるという答えを導きます。
これが功利主義のトロッコ問題ですが、果たして多数の人を助けるために1人を殺すことが正当化されるのでしょうか?これが功利主義の問題点の一つです。
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功利主義への批判
功利主義に対しては様々な批判が寄せられています。
上で見た「たくさんの人を幸福にするために、少数者の幸福は制限しても良い」となりがちな点の他にも、功利主義でいう「満足度」を、どのように計測すればいいのか?という問題もあります。
例えば、あるアイスを食べて美味しいと感じ幸せに感じる人もいれば、そのアイスを食べての美味しいと感じず、幸せに感じない人もいますよね。
このように、人の満足度というのは時と場合によってかなり変わるものですから、「できるだけたくさんの人の満足度を上げるのが良い選択」と考える功利主義には問題点があると批判されるわけです。
そのため、単に満足度を高めるだけでは、みんなが幸せになるような社会になるかどうかはわからないと言えます。
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まとめ
今回は、功利主義の意味や具体例について解説しました。
本文で紹介しましたが、ベンサムが考え出した功利主義は様々な問題点があるものの、現代社会において主要な考え方となっています。
哲学の歴史や経済学を学ぶ上でとても大切な考え方なので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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