「イスラム教では豚肉が禁止されているので食べない・イスラム教徒の友達には食べさせてはいけない」という話は、みなさん一度は聞いたことがあると思います。
普段からイスラム教に触れる機会が少ない人は、「聞いたことはあるけどなぜかは分からない...」「本当に一切食べないの?がまんできるの?」などなど、疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、イスラム教で豚肉を食べない理由や、食べてしまったときにはどうしているのか?(例外的なケース)について解説していますので、参考にしてみてくださいね。
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イスラム教で豚肉を食べない理由
イスラム教で豚肉を食べない理由としては、次のようなものが挙げられます。
イスラム教で豚肉を食べない理由
- ①聖典にストレートに禁止事項として書いてある
- ②豚は「見返りが少ない」から
- ③動物としての不浄なイメージ
- ④衛生上の問題
以下で順番に説明しましょう。
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①聖典にストレートに禁止事項として書いてある
実は、イスラム教の聖典であるコーランに豚が禁止であることが、ストレートに記されています。
聖典(コーラン)に記されている禁止箇所
「次のものについては神がお前たちに禁じた。すなわち、豚の死体、血、肉。(コーラン2・168)」
「汝が食べてはならぬものは、死獣の肉、流れ出る血、豚肉、さらにはアッラー以外の神の名を唱え殺されたもの、絞殺されたもの、打ち殺されたもの、堕死したもの...(コーラン5・3)」
他にも似たような箇所はたくさんありますが、同じ意味なのでここでは割愛します。
ここまでストレートに聖典に記されていたら、その聖典に従っている信者たちは流石に食べることはできないですよね。
これが現代までイスラム教で豚が食べられていない大きな理由の一つです。
コーランだけでなく、聖書にも記されている
「豚を食べてはいけない」というルールは、コーラン(イスラム教の聖典)にも記されていますが、キリスト教のバイブルである聖書にも記されているのです。
聖書に記されている禁止箇所
「その肉(豚肉)をお前たちは食べてはならない。またその死体に触れてはならない。それらはお前たちにとって不浄のものである。(レビ記11・24)」
コーランに記されている内容とほぼ同じですね。
聖書はイスラム教でも教典とされているもので(コーランの方が重要)、聖書も長らく尊重されています。
イスラム教徒にとっては、聖書とコーランのダブルパンチで禁止されているので、食べるわけにはいかないというわけです。
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②豚は「見返りが少ない」から
ここまでで、イスラム教で豚肉を食べない理由は聖典に記されているからであるということがわかっていただけたと思います。
では、なぜコーランと聖書にこのように記されているのでしょうか?
文化人類学者のマーヴィン・ハリスが唱えた説があります。
それは「豚は生産する時の手間、見返りが少ないからタブーになっている」という説です。
説明すると、牛はワラなど、人間が食べられないものを餌とすることができますが、豚はできません。
豚は人間の食料を分け与えないと十分に成長しないのです。
また、豚は食用以外では役に立ちません。
牛は労働力にもなりますが、豚はそれらのことは不可能で、成長させることでの食用以外での見返りがないのです。
物資がとても少なかった昔の世界では、豚はどちらかというと「お荷物な家畜(手間がかかる割に見返りが少ない家畜)」だったのかもしれませんね。
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③動物としての不浄なイメージ
みなさんは豚という生き物に対してどのようなイメージをもっていますか?
悪口に使われることもありますから、決してポジティブなイメージではないでしょう。
いろんな文献を見る限り、昔の人も同様に豚は「不潔で不浄で見た目も悪い動物」という認識をしていたことがわかっています。
こうしたイメージから、「その不浄なものを食べる」ということがタブー視されるようになった可能性があるのです。
④衛生上の問題
「豚肉はしっかり焼いて食べる必要がある」
現代でも多くの人がこのように考えていますよね。
レアなど生に近い状態で食べられることもある牛肉とは大きな違いです。
豚は伝染病や感染症を媒介するため、しっかり加熱する必要があるのは今も昔も変わりません。
さらにいうと、昔はそれほど加熱調理の設備も整っておらず、それらの知識やノウハウも全体に行き届いていないので、豚によって感染症が拡大していく恐れがありました。
こうした伝染病や感染症を恐れていたことも、イスラム教で豚を食べるのがタブー視されていた理由の1つです。
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イスラム教徒が豚肉を食べたらどうなるの?
もし、イスラム教の信者が豚肉を食べたらどうなるのでしょうか?
上で見てきたように、タブーを侵すことになってしまうことは間違いありませんね。
しかし、同じタブーを侵すのでも、「わざとタブーを侵す」のと、「知らずにタブーを侵す」のとでは罪の深さには大きな違いがあるのは当然です。
まず、知らずに無意識で食べてしまった場合は、大きな問題はありません。
コーランにも次のように記されています。
聖典(コーラン)「豚を食べてしまったときはどうしたら?」
「止む終えず、また意図せずこの法を犯した者には、神の慈悲が注がれる」
神に心の中で謝罪すればOK、ということですね。
一方で、故意に(わざと)食べた場合にはイスラム教の戒律をあえて破ったということですから、罪は深くなります。
どのぐらいの精神的ダメージがあるかはその人の信仰心しだい(強く神の戒律を信じている人にとってはしばらくは立ち直れないぐらいのダメージでしょう)ですが、強い罪悪感を感じざるを得ない状況になるのは間違いありません。
イスラム過激派の人たちはどう考える?
イスラム過激派(原理主義者:コーランの戒律をそのまま一言一句守ることを信条としている人たち)にとっては、豚肉を食べると天国に行けなくなると考えている人もいます。
そのため、戦場などでは武器に豚肉の血をぬっておき、それで相手を攻撃するということも行われているのです。
ただ、イスラム教というのは世界に何億人も信者がいる世界宗教ですから、だれもがこんな厳しいことをいっていてはやってられません。
なので、ほとんどのイスラム教徒は、豚肉を我慢できずに食べてしまった…というときにも、心の中で「神様ごめんなさい」とおわびすることで済ませているケースが多いようです。
↓上でも挙げたコーランの内容を再度見てみましょう。
聖典(コーラン)「豚を食べてしまったときはどうしたら?」
「止む終えず、また意図せずこの法を犯した者には、神の慈悲が注がれる」
イスラム教というのは実はとても寛容な(優しい)宗教なのです。
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イスラム教徒が豚肉を食べられる例外的ケースはある?
禁止されている中でも、イスラム教徒が豚肉を食べられる例外的なケースはあります。
例えば信者個人によっては、観光でイスラム圏以外の国を訪れた時は、普通に食べることもあるそうです。
「神の裁きが届かない地域」と認識するのですね。
他にも、イスラム教国家以外で、豚の脂を使った揚げ物などがあったり間接的に豚肉を食べることは可能です。
イスラム教徒は豚に触れない?
イスラム教徒は、教義に忠実に従えば豚に触れてもいけません。
敬虔な信者なら、よっぽどのことがない限り豚と関わりを持つことさえありません。
ただし、これも上で見たように、その人の信仰心しだいという部分が大きいですね(もし豚に触っても、触った後に「神様ごめんなさい」で終わらせる人がほとんどだと思います)
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まとめ
今回はイスラム教で豚が禁止されている理由をいくつか紹介しました。
グローバル化に従って、日本に住んでいてもイスラム教徒の人を多く見かけるようになりました。
今後、生活の中でイスラム教の習慣に触れるケースはどんどん増えていくと思いますので、基本的なルールについては理解しておきたいところですね。
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