「つわものどもがゆめのあと」という言葉は、『夏草や 兵どもが夢の跡』という松尾芭蕉の俳句の一節です。
夏草や 兵どもが夢の跡
(なつくさや つわものどもが ゆめのあと)
この記事では、芭蕉の句の意味や味わい方について、簡単にわかりやすく解説します。
俳句に込められた想いとともに、ぜひ参考にしてみてください。
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松尾芭蕉の俳句『夏草や兵どもが夢の跡』の意味とは?/h2>
この句は、松尾芭蕉が平泉(現在の岩手県平泉町)で詠んだ俳句といわれています。
ちなみに「つわもの」は「強者」ではなく「兵」と書きます。当時の兵士のことですね。
芭蕉は旅をしながら俳句を詠んだ人なのですが、その旅を「奥の細道」という書物にまとめています。
芭蕉が平泉を訪れたのは、旅の終着点といわれていますから、彼の旅が遂に終わりを迎えるときに詠まれた句ということになります。
「つわものども」とは誰のこと?
松尾芭蕉は江戸時代の人ですが、その芭蕉が平泉を訪れる500年ほど前には、「奥州藤原氏」という人たちが平泉の地を支配していました。
奥州藤原氏は、祖父・父・子と三代に渡って繁栄を築いた後に滅亡してしまいます。
奥州藤原氏を滅ぼしたのは、有名な源頼朝(鎌倉幕府の創始者)です。
源頼朝は弟である源義経と対立していたのですが、弟を最後に追い詰めたのがこの平泉だったのです。
(源義経は平泉の奥州藤原氏に助けを求めたのですが、捕らえられてしまいます)
源義経の居館の跡地で詠まれた句
源義経が居城をかまえていたという平泉の高館が、義経の最期の場所となりました。
それから500年が経ち、芭蕉がこの高館があったとされる場所にのぼって下をながめると、ただどこまでも夏草が生い茂っていました。
そこには、かつてここが藤原家の栄華を極めた場所だということを示すものは何もありません。
義経の華やかな居城も、激しい戦場となったことも、まるで夢のようで、跡形もありません。
見えるのは、ただ夏草が青々と生い茂っている風景だけです。
そんな風景を目の前にして、芭蕉は「夏草や 兵どもが夢の跡」の句を詠みました。
この句は悲劇の死を遂げた源義経をしのんで詠んだ句だとも言われています。
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「つわものどもがゆめのあと」の俳句に込められた思い
松尾芭蕉がこの句に込めた思いはなんでしょうか。もう少しくわしく読み解いてみましょう。
夏草というのは、毎年生い茂っては枯れ、また次の夏になると生い茂って…を繰り返すものですね。
昔あったはずの藤原氏の栄華も、英雄義経も、勇ましい武士たちも、儚い一時の夢のように、跡形もなく消えてしまいました。
今はただ夏草が生い茂るだけの風景を眺めて、それらと夏草を重ね合わせ、人生とはなんと無常で儚いものだろうか、虚しいものだな。
という芭蕉の気持ちが込められていると考えられます。
人の世の移ろいやすさを夏草にたとえている
人の世は移ろいやすいものですが、自然もまた、絶えず流れて同じではありません。
それでも自然は消えることなく、また新しい息吹をもたらしますが、人はそうではありません。
松尾芭蕉は、「奥の細道」の中で、たびたび森羅万象がもつ力に感嘆し、俳句に込めて詠んでいます。
この句も、そんな森羅万象がもつ素晴らしい力への敬意が込められているのかもしれません。
現代では「つわものどもがゆめのあと」はどういう意味で使う?
芭蕉の句「夏草や 兵どもが夢の跡」はあまりにも有名な俳句です。
そのため、現代の普通の会話でも「つわものどもがゆめのあとだね」などと使われることがあります。
(歌の歌詞などに使われることもあります)
現代で「つわものどもがゆめのあと」といったときには、どのような意味になるでしょうか。
そもそも「夢の跡」というのは、夢の名残とか、現実にあったことが何の痕跡も残さないできれいさっぱり消え去った様子を指します。
それが「兵どもが夢の跡」となると、芭蕉の句に込められた想いを受けて、「人生って儚いよね」とか「世の中というのは移ろいやすいものだよね」という意味で使われます。
平家物語の冒頭にある「諸行無常」と似たような意味合いですね。
つわものどもがゆめのあと=熱く盛り上がった後の静けさ
もっと現代的な使われ方としては、「熱く盛り上がった後の静けさ」といった意味合いでも使われることがあります。
いわば「宴のあと」と同じような意味合いですね。
例えば、夏の甲子園が終わった後の球場は「兵どもが夢の跡」のような情景と言えるでしょう。
まさに、高校球児の熱い戦いが終わった後の静寂な甲子園球場は「夢の跡」という感じがしますよね。
まとめ
今回は、松尾芭蕉の俳句「夏草や 兵どもが夢の跡」の意味について読み解いてみました。
有名な俳句ですので、日常会話のちょっとしたシーンで「つわものどもがゆめのあとだね」という表現が使えたら素敵ですね。
松尾芭蕉の生涯や俳諧の世界に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
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