オッカムの剃刀(かみそり)というのは「何かを説明するときにはできるだけシンプルに説明すべきだ」という考え方のことです。
シンプルイズベストという言葉があるように、私たちも日常的にこの考え方を自然に取り入れていますよね。
実は、この考え方は科学者や研究者がものを考えるときにも使っているものなのです。
今回はこの「オッカムの剃刀」の意味について、由来や使い方をわかりやすく解説します。
日常会話で使う上で注意したいことについても具体例で説明していますので、参考にしてみてくださいね。
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オッカムの剃刀の意味とは?簡単にわかりやすく解説!
冒頭でも少し説明しましたが、オッカムの剃刀とは「何かを説明するときにはできるだけシンプルに説明すべきだ」という意味の言葉です。
「頭のいい人ほどものごとをシンプルに考えるものだ」という教訓がこめられたことばともいえますね。
例えば、大学で学生が教員にレポートを出したときなどに、「もっとわかりやすく説明してごらん。オッカムの剃刀だよ」といったようにアドバイスしたりします。
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科学者たちもオッカムの剃刀を常に心がけている
むずかしいことばを使って説明する人というのはなんだかかしこそうに見えるものですが、実際にはそんなことはありません。
科学者や哲学者は「頭のいい人たち」の代表だと思いますが、彼らはみな「シンプルな説明であればあるほど望ましい」と考えているのです。
例えば、数学の数式などはごちゃごちゃと数字や記号がたくさん並んでいるものよりも、すっきりとシンプルなものが「美しい」とされます。
↓例えば、「世界で最も美しい等式」といわれるオイラーの等式は、次のようなものすごくシンプルな等式です。
↑アインシュタインが考えた相対性理論も、数式にするとこんなにシンプル。
科学者たちは「できるだけものごとをシンプルに考えよう」ということを常に意識しているのです。
このような心がけというか、ものごとに取り組む態度のことを「オッカムの剃刀」と呼ぶわけですね。
ひたすらむずかしいことに取り組んでいる科学者たちでさえものごとをシンプルに考えようとしているわけですから、天才ならぬ私たちの日常生活ではなおさらシンプルにものごとを考えることが大切といえます。
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オッカムの剃刀の由来や歴史
意味について理解ができたところで、「オッカムの剃刀」という言葉の由来についてもみておきましょう。
オッカムの剃刀の提唱者といわれているのは14世紀のイギリス、ロンドンの近くの町オッカムに住んでいたウィリアムという人です。
土地の名を取ってオッカムのウィリアム、又は単にオッカム・ウィリアムと呼ばれることがあります。
当時のヨーロッパ世界はカトリック教会の権威が絶大で、全てのことは聖書と神によって説明されていました。
この神学に基づいた世界のなかでウィリアムは自然現象を説明するのに神を持ち出す必要はない、ということを唱えました。
ただし、ウィリアムは神を否定したのではありません。
ウィリアムは自然を説明するのに、目に見えない神に頼るよりも観察できる事実に基づいて説明するほうがよい、ということを言ったのです。
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中世の終わり
このウィリアムの考え方はやがて、「神は信仰であって知識ではない」という立場をつくり上げていきます。
観察できる事実に基づいて世界を説明する、という方向性がその後の科学的思考法の中心的な方法になっていきます。
オッカムの剃刀は教会が支配した中世という時代を終わらせ、科学と技術の時代を迎える役割を果たしたのです。
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オッカムの剃刀を正しく理解するためのポイント
オッカムの剃刀という言葉の意味を正しく理解するためのポイントとしては、次の3つが挙げられます。
オッカムの剃刀の意味を理解するための3つのポイント
- ①「簡単な説明が常に正しい」ということではないのに注意
- ②「説明のために不要なものは存在しない」ということではない
- ③どういう説明が「簡単」なのか具体的に知ること
以下でそれぞれの項目についてわかりやすく解説します。
①「簡単な説明が常に正しい」ということではないのに注意
オッカムの剃刀は、シンプルな説明をするべきだといっているだけであって、そのシンプルな説明が「正しい」と言っているわけではありません。
簡単に説明できるのにわざわざ難しく考える必要はない、といっているのです。
あることを説明するのに二つの前提条件が必要な説明と一つの前提で説明できる方法の二通りあるときには、一つの前提で説明できるほうがよい説明だ、ということです。
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②「説明のために不要なものは存在しない」ということではない
昔は、雷などの自然現象を説明するのに神様が使われていました。
今は気圧の変化や放電といった科学的な説明をしていますので、自然を説明するのに神様は必要ありませんね。
ですが、これは「神様がいない」ということを言っているのではありません。
神様がいるかいないかとは関係なく説明できる、といっているだけです。
オッカムの剃刀にしたがって、できるだけ説明するための要素を省いたとしても、その省かれた要素そのものにまったく価値がないわけではないということですね。
③どういう説明が「簡単」なのか具体的に知ること
説明が正しいかどうかを考えるときに、調べてみなければならないことが少ないほどシンプルであると言えます。
例えば、エジプトのピラミッドは誰が作ったのか、というミステリーについて、①人が作った、という説明と②宇宙から来たエイリアンが作った、という説明があるとします。
②の説明を取るならば、そのエイリアンはどこから来たのか、どうやって来たのか、なぜ地球に来たのか、ということの説明がなされなければなりません。
したがってこの場合は①の「人が作った」という説明のほうがシンプルということになりますね。
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オッカムの剃刀のさまざまな言い換え(類義語)
オッカムの剃刀のもともとの形は「少ないものですむのにわざわざたくさんのことを持ち出すのは無駄なことだ」といった言葉です。
これと同じことをアイザック・ニュートンは次のように言っています。
自然物に関しては、事実でかつ充分な原因だけを認めるべきだ。同じ自然的影響については、できるかぎり、同じ原因を用いて説明すべきだ。
他にオッカムの剃刀を言い換えたものとしては、論理学者ウィトゲンシュタインの次のようなことばがあります。
あるシンボルが必要ないのであれば、それは意味がないということだ。
必要とする前提が最も少ない説明がもっとも確からしい。
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オッカムの剃刀の使い方と例文:世界から余計なものをそぎ落とす!
オッカムの剃刀は実際にどんな風に使われているのでしょうか。
いくつかの例を見てみましょう。
オッカムの剃刀を使った例文①
「オッカムの剃刀によれば天動説よりも地動説が優れている」
太陽が地球の周りを回る、と考えた場合、他の星が空を動く軌道はとても複雑になり、説明が難しくなります。
一方、太陽を中心に置いて地球が太陽の周りを回る、と考えれば他の惑星も地球と同じように太陽の周りを回っている、と考えることで簡単に説明できます。
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オッカムの剃刀を使った例文②
「アポロの月面着陸はNASAのやらせだという人がいるが、オッカムの剃刀を使えばそんなことをする必要がないってことが言える。」
人が本当に月に着陸したのかどうかを確認する方法はありませんが、もしもNASAが撮影したフェイクだとすると、多くの仮説の上に説明を立てることになります。
「もしもこうだったなら、そういうことが起こったかもしれない。」
「そういうこともありえるから、こうじゃないとはいえない。」
といった「もしも」の仮説は全てオッカムの剃刀で切り落としてしまうことができます。
オッカムの剃刀を使った例文③
「タイヤがパンクしたから誰かがいたずらしたって考えるのはどうかな。きっと自分でクギでもふんだんだろう。オッカムの剃刀だよ。」
シンプルな説明をまず最初に取り上げるべきです。
その説明では解決できない場合に次の複雑な説明を検討していく、というのが正しい順序。
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まとめ
今回はシンプルに考えることを思想にまで高めた考え方、「オッカムの剃刀」について説明しました。
物事はシンプルに考えたい、オッカムの剃刀はそれがよいやり方だと言います。
地球にいる動物や植物は、なぜこんなに多くの種類がいるのでしょう。
この疑問に対して、環境の変化、生物の適応、生物同士の競争、遺伝子といった要因を挙げて説明する進化論と、「神様がそう作った」という聖書の説明は、どちらがシンプルでしょうか。
なお、オッカムの剃刀はいつも「正しい」訳ではないことには注意しましょう。
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